迷いと選択について

—— 安部公房的視点で考える、人を取り巻く精神的な二重構造

人生で迷うことは誰にでもあります。
「どうすればいいのか」「動くべきか、流されるままか」――。

占い鑑定で出会う多くの方も、心では不本意だと思いながらも、状況に従い決断を先延ばしにしています。
その姿を見ているうちに、人間とは何か、選択とは何か、と考えるようになりました。

日本の作家・安部公房は、こうした人間の矛盾を深く見つめてきました。

人間は、自分で選んでいると思っていても、実際には環境や社会、他者の影響を受けています。
自分の意志を失い、状況に押されるまま生きることも少なくありません。

『砂の女』『箱男』『第四間氷期』などの作品には、
状況に従わざるを得ない中で、微かに意思を差し込もうともがく人間の姿が描かれています。

この「もがき」が安部公房文学のだいご味であり同時に、人としての生き方を左右する分岐点になっていると思います。

そして安部公房の哲学は、「人は選んでいないのに、選ばなければ生きられない」という二重構造を示しているのです。

鑑定で日々感じるのは、まさにこの二重構造です。

彼らは選択の自由があるようで、実際には多くの制約に縛られています。
その一方で、小さな意思を足さないと生活や心が回らない。

つまり、人間は選択していないのに、選ぶ意思を置かないと生きられないのです。

「もがき」とは「違和感」が元になっています。
状況の中で小さな違和感を感じ取ることから、もがき始めるのです。

大きな決断や結果を求めず、小さな意思の粒を置くこと。
占いはその粒を見つける手助けになります。

そして、このタイミングは九星気学や四柱推命で図ることもできます。
星や命式の流れに沿って小さな意思の粒を置くことで、状況の中でも自分らしく行動する力を得られるのです。

迷いや矛盾は人間の自然な構造ですが、恐れる必要はありません。
ここで大切なのは、直感に従うことです。

突然やってくる、降りてくる感覚――それは意思の粒の一つ。
自分でもよくわからないけれど、「動こう」「変えよう」と思う瞬間に従うこと。
この直感こそ、環境に支配される中で自分の意思を差し込む方法であり、二重構造の中で生きるための重要な鍵です。

迷いや不確かな感覚は、人間の二重構造から生まれる自然なものです。
完璧に選べなくても、結果に縛られなくても、そこから得られる感覚を見つめていくだけで十分です。

私はこう考えています：
人間は構造に支配され、ほとんど何も選んでいない。
しかし、その構造の中で「選ぶというフィクション」を持たないと、存在そのものが崩れてしまう。

だからこそ、私たちは小さな意思の粒を置き、直感に従い、迷いや矛盾を恐れず生きていくのです。
その積み重ねこそが、あなたの生きる証であり、光になります。